
コラム
コラム
私たちが普段、口から食べ物を摂取し、飲み込むまでの一連の流れを摂食嚥下といいますが、それらの動作は大きく分けて5段階に分かれています。
今回は「4.咽頭期」のお話です。
食べ物や液体を飲み込む準備ができると、軟口蓋が上がり、鼻咽腔(鼻の奥)との交通を遮断します。
そして舌根部(舌の付け根)や喉頭(のどぼとけ)が連動して動くことによって、反射的に食べ物や飲み物が食道へ送られていきます。
このとき喉頭蓋(気管の入り口にある蓋)が気道を塞ぐことで、食べ物や飲み物が気管や肺の方へ入るのを防ぎます。
しかし、この機能が筋力や神経反射の低下によって衰えてくると、誤嚥を引き起こし、頻繁にむせの症状が現れるようになります。気管や肺の中に異物が入り込むわけですから、息ができなくなったり、肺炎が起こる一歩手前の危険な状態と言えます。
食事中のむせは嚥下機能の低下が疑われます。
嚥下機能を回復するために簡単に出来るトレーニングをご紹介します。
※時間や回数は目安です。ご自身の体調に合わせて無理のないペースで行ってください。
コップやペットボトルに水を入れ、その中にストローでゆっくり息を吹き込みます。出来るだけ長くゆっくり行うと良いでしょう。軟口蓋の挙上と鼻咽腔の閉鎖に効果があります。
仰向けに寝た状態から頭を起こし、つま先を見るようにします。30秒間この姿勢を維持しましょう。ゆっくりと頭を戻し、休憩をはさみながら3回を1セットとして、1日2~3回行ってください。飲み込みの際に喉頭を持ち上げる筋肉群に効果があります。
大きく口を開き、10秒間維持します。これを何回か繰り返します。舌骨上筋群の強化に効果があります。
手のひらを額に当て、おへそを覗き込むようにします。このとき、頭が動かないように手のひらと額で押し合いをするようにして、これを5秒間維持します。適度に休憩をはさみながら5回繰り返しましょう。これを1セットとして1日に2~3回実施しましょう。嚥下に必要な頸部の筋力強化に効果があります。
お子さまが無意識に口を開けたままにしている場合、「小児口腔機能発達不全症(しょうにこうくうきのうはったつふぜんしょう)」の可能性があります。これは近年、小児歯科の現場で注目されている疾患で、放置すると歯並びや発音、食べ方などにさまざまな悪影響を及ぼすことがあるため、早めの対応が大切です。
「口ぽかん」とは、日常的に口を閉じず、ぼんやりと開けた状態が続いていることを指します。一見、かわいらしいしぐさに見えるかもしれませんが、実は「口呼吸」が習慣になっているサインかもしれません。
口呼吸が続くと、以下のような問題が起こりやすくなります:
虫歯や歯周病になりやすい
アレルギー性鼻炎や風邪を引きやすい
出っ歯や受け口など、歯並びが悪くなる
発音が不明瞭になる
集中力の低下や睡眠の質の低下
これらの症状が複合的に現れるのが「小児口腔機能発達不全症」です。
小児口腔機能発達不全症とは、食べる・話す・呼吸するなど、口まわりの機能がうまく発達していない状態を指します。具体的には、
口がいつも開いている
食事中にクチャクチャ音を立てる
よく噛まずに飲み込む
舌の位置が正しくない
発音がうまくできない
といった特徴が見られます。
このような症状があると、歯や顎の発達にも悪影響を及ぼし、将来的に矯正治療が必要になる可能性も高くなります。
当院では、小児口腔機能発達不全症の早期発見・早期対応に力を入れています。以下のような取り組みを行っています:
口腔機能のチェック(口唇閉鎖力、舌の動きなど)
生活習慣のアドバイス(姿勢、呼吸、食べ方の指導)
必要に応じてMFT(口腔筋機能療法)や矯正治療の提案
お子さまの「口ぽかん」が気になる保護者の方は、まずは一度ご相談ください。早めの対応が、お子さまの健康な発育と、きれいな歯並びにつながります。
「子どもが口を開けているだけ」と思っていたら、実は小児口腔機能発達不全症だった――というケースは少なくありません。将来の歯並びや健康のためにも、気になるサインを見逃さず、早めに小児歯科を受診することをおすすめします。
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